デザイナー
たちばなまこと

体育の後の教室
濡れ髪のフローラルを手でおおいながら
つかのまの夏に飛び込んだ
空の青は私の青を許してくれる青で
急アングルにめまいながら
ただ 何かを得たいと思っていた


胸が腫れても 胸の奥は追いつけない
手足はもっと追いつけなくて 背伸びばかり覚えた
小さなからだを大人にしてくれる詩を探しに出掛けた
嘘が上手な店員には背中を向けて
私を待っていてくれる詩に出会いたかった
描(えが)きたい色にはいつも出会えなかった
どれをまとったって詩の中でからだが泳ぐ
長すぎる詩はひきずって汚してしまった
洗えばまた色褪せてクローゼットの奥で詩は泣いた


詩の中で息をする生糸や色やにおいは泣いた
私の皮膚も同じ
シルクやラミーやビスコースの下で泣いた
求めても見つからず 求められもせず
それでも 何かを得たくて
さみしがりやの泣きたがりが
背伸びして 夢を見た


皮膚がしなやかによろこぶ声の 衣ずれを抱きしめるような
愛しい色のトレーンの軌跡が 小さな世界を照らすような
刺繍に光る恍惚の溜め息に 運命を思えるような
私は詩を描きたくて
駅のコンコース ポスターの閃光に歩くのを忘れ
ウィンドウディスプレイの生きたアートに 仕事の疲れを忘れ
恋人に褒められて
すれ違う人に振り返られて
この詩をまとう瞬間が幸せと
求められてやまない手のような
私は詩を描きたくて
物理じゃ明かしきれない
何かを得たいと思っている
何かを得て欲しいと思っている
私は今日も詩を描いている
さみしがりやの泣きたがりはこの夏にも飛び込んで
背伸びして 夢を見る



自由詩 デザイナー Copyright たちばなまこと 2005-07-04 08:16:44
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