天使処刑
AKiHiCo

小さな音と共に白い羽根が折られた

静寂の空気の中狭い通路を前に向かって歩く
黒い布で目隠しされ足には枷を
両手を引く者の温もりが伝わってくる
風もなく音もなく裸足の足音だけが響く
何も浮かばない考えるのはもう遅くて
思い出の一つ一つを辿れば
どこに行き着くのだろう

高い台に登らされると歓声が渦を巻いて押し迫ってくる
僕に視線が集中するのを感じた
今から行われる刑を皆は楽しみで仕方がないようで
羽根を折られた僕はもう逃げる事は出来ない
このまま流れに流されて刑を受けるしかなくて
事実を述べる口は偽物と罵られ
罪もないのに刑を受ける
これもまた運命なら素直に受け入れよう

あの頃は皆に認められ信頼を集めていた
友達と戯れて笑って過ごしていた
あれは全部偽物だったのだろうか
悲しい記憶に染まってゆく
どうして僕が処刑されなければいけないのか
理由さえ見当たらない
理由など必要ないのかも知れない
僕の死は皆の娯楽でしかなくて

何のために今まで生きてきたのだろう
高い台の上で考える
冷たい風が頬を撫でた


自由詩 天使処刑 Copyright AKiHiCo 2005-07-01 04:28:30
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