*梅雨空*
かおる
雨に降り込められた金魚鉢からみる世界は
刹那をその胸に刻印するように
モノクロームに沈もうとしている
埃っぽいアスファルトをひっくり返しにかえるの詩が
あめ あめ 雨と謳っている
コンクリートはいつか地にかえるのか
陽炎たつ先触れに
緑濃く茂るハッパの間に見える空はどんよりと
しがらみという膿みと倦怠感を引っ張りだしてきた
命や実りでギューギューに押し込められた憶いは
遠く月の砂漠を旅するフタコブラクダのこぶの中
大地から沸き上がる熱も飽和状態で
覆い被さってくる緑のトンネルに蓋をされ
風もどこにも逃げ場もなく 地に潜り
夏を揺るがす蝉の声に化けるよう
そんな街角のオアシスを抱いて
もう枯れ果てて日常を彷徨っているさびしんぼの代わりに
今日も 空が泣いている