そのスピードで
ベンジャミン

街が夕焼けに染まるころ

通勤快速を降りれば足早になる
車内の熱気にゆであがってしまった
君はきっと
夕方の空気が好きに違いない

商店街を駆け抜ける自転車に
危うくひかれそうになっても
崩れたバランスを立て直すのには慣れている
疲れていても
何かスイッチのようなものがあって
それは誰に押されるでもなく
自分で押すでもなく
どこにあるかもわからないのに
脚が勝手に動くのだ

家路へと続く道は
電信柱が等間隔に並んでいて
たとえ数えていなくても
そばにくれば当たり前のようにわかる
お隣の犬は
まだ晩御飯前らしい声で啼いている
それを横目でくすくすと笑いながら
玄関をあけるとき

ただいまとおかえりが交差して
次の言葉を言おうとする
君はまるで
走って帰ってきたみたいに

自分の息がはずんでいることに気づく
       


自由詩 そのスピードで Copyright ベンジャミン 2005-06-28 02:23:14
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