鉄夜
木立 悟




遮断機が下り
列車は近づき
他の音は止み
鉄路になびく
草の背は蒼
草の背は蒼


薄い曇が
空を覆い
星は絶えず
北へ流れ
呼びつづけても
夜はひとり
月はまるく
月は赤く


過ぎる列車の
貨物を数え
過ぎる列車の
窓を数える
空は進む
車輪の速さ
遅れて点く灯
なぞる指さき
高架橋から
ひろげた両手と
同じひろさの
夜になるとき


風は落ちて
草をころがり
鉄は軋み
光は馳せる
音は月まで
行っては戻り
しんとした野に
湧きあがる声
おいでおいで
夜はひとり
呼びつづけても
遠去かる背


見えない雑踏
ひいてゆく波
同じ数だけ
ゆらめく鏡像
星より遠く
歩むかがやき
月に触れる手
夜になるとき
野を照らす鉄
夜になるとき








自由詩 鉄夜 Copyright 木立 悟 2005-06-22 17:48:43
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