五十音頭韻ポエムさ〜そ
佐々宝砂

[さ]


さあ差し向かいで
鯖煮
里芋
さよりの刺身
薩摩焼酎
差しつ差されつ

さわさわさざめき
早苗さみどり


さかなではさかしら
さかねじはさかうらみ
さしずめ
猿と猿との酒のさやあて

さえざえと酒にさめたら
さらりされこうべさらけ出し
さばさば去ってゆけばよい


さはあれさきわう
酒ほがい
沢煮
鮭とば
桜えび
薩摩焼酎
差しつ差されつ

さやさや小夜更け
笹はささやく




[し]


しきりにしぐれる
霜月初旬

しかつめらしくしたためる下書きは
七五に縛られ
しがらみに縛られ
しらばくれ
しどろもどろの白川夜舟

しまいにしましょう
尻切れとんぼで退きましょう

沈みゆく紫檀のしじまに
しとどに湿るしとねに
下萌え霜枯れる下陰に

しかあれど
しおたれた白萩は
しみじみ沁みる霜夜の詩です




[す]


水蜜桃をすすめても
すっぱいスカンポ吸いながら
すばしこく過ぎてゆく素足

すってんころりと滑るから
すかさずすりよっても
涼しい顔してすたすたと

すげないんだよね
すねるぞ
すさんですてばちだぞって
すごんでも
すまないですませちゃいそう
据え膳も据えすぎると饐えちゃうよ

筋書きはすいすい進まないけど
澄まし顔に
すうっと素顔が透けたら
素敵だろうな




[せ]


せわしげな蝉しぐれに
急かれる背中に

瀬戸際で切羽つまって
急き立てたりしない

競りあいせめぎあい
攻めの台詞を背負う背中に

背伸びして
責め立てたりしない

せめてせめてじゃ
攻め落とせないもの

背筋伸ばして
繊細すぎる星座を
赤裸々に積分すれば

積乱雲は鮮烈に
せつなく
赤面するでしょう

接吻は刹那の閃光でも




[そ]


空は
そらごとに染まり
そらとぼけて

そらごとは
そよ風よりも楚々と
空に添い寝して
空のした
袖も
卒塔婆も
ソネットも
そらごとに染まり

そらごとをそらんじる
そぞろ心はそそのかされ
そそくさと反りかえり
そら笑いしたり
そら泣きしたり

それだから
空は
そらごとに染まり
そらとぼけて

それでも

そらごとに染まっても
染まっても
空は
そらごとに損なわれない

空は空だ

空の底
そらごとにそぐわぬ「それ」を
そっと育てながら

空はその日に備えている








自由詩 五十音頭韻ポエムさ〜そ Copyright 佐々宝砂 2003-12-07 06:06:35
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