優しい鳥
つきのいし.

  感じない掌の上に
  鳴かない鳥が
  人のように瞼を閉じる

  冷たい雨の降る
  コンクリートの上で
  静かに眠りにつく
  戯れるように
  温度を残して

  *

  おかあさんが
  前に似たようなことがあったと
  話してくれた
  体をさすったりしたけど
  生き返らなかったと
  庭の土の中に
  埋めてあげたらしい

  鳥がしんだのは初めてだった
  前に拾って帰った時は
  ランドセルをしょっていた時で
  道端に転がっているすずめを拾って
  風呂場に持っていって洗って
  じぶんの皮膚科の薬を塗ってあげたら
  いきなり生き返って
  格子から飛んでいった

  *

  鳥は
  自由ばかりもなく飛んでいる
  土の上だけで生きられたなら
  羽は要らなかったかもしれない
  曖昧な風に乗るのは
  きつかったろう

  *

  大人になって
  見つけた鳥は
  汚れた屋上にいた
  大きくて 黒くて
  生きていたら怖いと思いながら
  近づいたら怖くなくなった
  濡れた体は重たくて
  手にとると
  膨らんでいてやさしかった
  優しい鳥だった

  やっとずっと
  土にいても
  だいじょうぶになった
  おかえりなさい
  鳥であるまえに生まれた
  おまえであるように






自由詩 優しい鳥 Copyright つきのいし. 2003-12-07 00:00:47
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