アンダンテ
望月 ゆき

わたしは、ほんとうは楽譜なのです
と 告げたなら
音を鳴らしてくれるでしょうか
指をつまびいて
すこしだけ耳をすましてくれるでしょうか
それとも声で
わたしを世界へと放ってくれるでしょうか
すくなくともわたしは
あなただけを待っていました


ピリオド、のようなものがそこいらじゅうに
点在しているような、夜でした


ずうっとここにすわっていたのに
スタッカートではずんで、あなたは
おとといの晩
わたしの頭上を飛びこえて、今では
4小節ほど先の未来を生きています


西の空から伝うメトロノーム
かすかに、でもたしかに、振動する
あるく速さでね、
って
もどかしく背中をふるわす
そうして、4小節先の未来にいるあなたに
いつまでも、追いつけないまま


ピリオド、のようなものをつなぐと、それは
星座のようなものになり
あしたになったらあなたが
アンタレス辺りにきっといるよ、と
それだけ告げると白く消えていきました


やがて
五線譜のかなたから明けてゆく
レース模様の、朝




自由詩 アンダンテ Copyright 望月 ゆき 2005-06-19 19:33:48縦
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