十月 十一月 十二月 虹
青色銀河団

 十月

忘れられない人がいる やわらかな白いカーディガンをきて 水辺のそばに佇んでいた人 手をふりやさしくぼくに微笑んでくれた あかるい霧のような雨が降っていた 
ぼくは何気ないそぶりで 自然に振舞おうとしたけど それがとても不自然で まっすぐその人を見詰めることができなかった 拗ねたような顔をしたぼくは まったくの子供だった 

いつも遅れる時計について
時間のながれる速さについて
とおい星の生誕について
南極の短い夏に咲く花について
水銀計について
渡り鳥の飛行距離について
空の大きさについて
銀河系の大きさについて
―ちっぽけなぼくの気持ちについて

雨は止んだ 夕焼けがとてもきれいだった 
虹がでていた 不吉なほど美しい虹がでていた 







 十一月

去年の子猫は
もうおとなになった
おととい
二匹の子猫を
産んだ

小高い丘の
天文台の脇をすぎる
風のように

夢はいつでも
ゆっくり醒めてゆく







 十二月

僕の水色の夢の中に住む
悲しいキリンは
その静かな凪のたたずまいが
一層物憂げな遠音を
儚むのだけれど
そこはかとなく香る
ヒヤシンスの根の偏西風が
僕のトレンチ・コートを
ずぶ濡れにしてしまう

コップの中の小さな稲妻が
悪戯っ子のように笑うと
すぐそこに
寝呆けた空缶の冬が
やってきていた







 にじ

ぺるせうすざの
はしっこで
にじをみていた

あおくひかる
ほむらのようにゆらぐにじ

ときおり
ちいさなほがはぜ
あたりがすこしだけ
あかるくなる


はくいきはかなしく
こんなにもきれいなほど

ぼくは
じゆうなんだ




未詩・独白 十月 十一月 十二月 虹 Copyright 青色銀河団 2005-06-17 22:09:19
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