欲望の歯
蒼木りん

ときには
紅い紅い林檎を買いたくなる

紅い林檎
磨いて磨いてあざやかに紅

ときには
紅い紅い林檎に歯をたてて

鬼のようにガツガツと食らいたい

般若の顔でガツガツと
人肉を食うようにガツガツと
狂ったようにガツガツと

ガツガツと
ガツガツと
ガツガツと

果汁は血の滴り
ただ一点を見つめて貪る

いったい
私は
何に怒る

いま
そこに存在したものが

まるく紅く美しく
私の視界にいたものが

一瞬の狂気の餌食になてしまった

前から
何もなかったように
死体が並んでいる

ひとつ
ふたつ
みっつ・・

果肉は
私の貧しい欲望と歯を満足させるだろう




未詩・独白 欲望の歯 Copyright 蒼木りん 2005-06-16 23:07:28
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