サンクチュアリの傷口に
紫音

踏破したことがない土地が消え
あまつさえ月を足蹴にし
フロンティアが昨日の彼方へ押しやられ
生き物を設計図ごと書き換え
あらゆる場所を舗装し
センス欠乏症のデザイナーズマンションに住む
賢い人たちは
次のフロンティアに侵蝕する

最後の果実
禁断の誘惑
開拓するのは
それぞれの魂

心の障壁は呆気なく解体され
禁じられた遊びは解禁され
無邪気に引っ掻き回し
飽きるまで繰り返しやってくる

神聖にして不可侵なものは
その弱さをさらけ出し
容赦なく打ち寄せるのは
焦げ臭い日焼けの痛み

神は死んだと叫ぶ前から神は死んでいた

心を覗かないでと叫ぶ前から心は裸にされていた


それは
アメーバのように執拗に
音も立てずに
わたしを消化する
ただここにいる
それだけの理由で


自由詩 サンクチュアリの傷口に Copyright 紫音 2005-06-11 00:08:33
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