ブルー・ハーツ
千月 話子
深呼吸の意味を教えて下さい
と、遥か空に問うのです。
朝鳥が木々を揺らして
飛び立つ足元から 追いかけてくる
化学物質を溶かし空 空間を
切り裂き 切り裂き飛んで行く
大都市の空が薄茶に包まれるのを
川越して こちら側から見ている私の
上空は広い 青で
辺りを囲む草木など
せいぜい2・3階までを守る術
見渡せば、所々に工場の煙突
白煙がゆる ゆるゆると
空高く溶けて行くのです。
花を見たい 私
雲に触れたい 私
何処に行けばいいのか
もう、判らなくて
逃げ場の無い夏 と名付けた
季節がもうそこまで来ています。
空気清浄機が外の空気を汚して
室外機が熱い空気で空に穴を開ける
車はいつまで黒い息をするのだろう
紫煙が清潔なCMで隠されてゆくよ
窓を開け放って 窓を
開け 放 っ て
通り過ぎる風鈴の音が
せめてもの 慰め
鳥が歌う 虫が鳴く
花が回る 魚が流れ行く
かの国の大地が揺れて かの国の上下が死んで
私達は 罪人と呼ばれ
地球は生きるもの全てが 生きる星で
人は上級の悪人と成り果てて・・・
いつか 荒れ果てた地に
朗らかな向日葵の花が咲いたとしても
嬉しいのか、悲しいのか
判らないまま泣くのでしょうか
そして、あの忘れがたき
チェルノブイリの空を想うのです。