午後の舟
塔野夏子

六月の
曖昧な空の下
白くたたずむ部屋
横たわる私の身体から
刻一刻と
鼓動がこぼれ落ちる

けだるい指で
クロニクルのページを繰る
季節は私には
いつも晩くやってくる

忘却は
残酷なほどたやすい
そこに意志さえなければ

さまよい
はぐれてゆく意識の分
自らを蝕む言葉が
おのずから綴られてゆく
だから最初からそこに
救いを求めたりしない

所詮は
誰もが気づかずに
どこかでタナトスに忠実なのだ

刻一刻と
存在がこぼれ落ちる
無の海へと
そしてそこを忘却のように
私をのせてひとつ漂う
午後の舟



個人サイト「Tower117」掲載





自由詩 午後の舟 Copyright 塔野夏子 2005-06-07 18:27:11
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