着地点
霜天

残していったものが
背中でまだ疼いている
一日の始まり
蝶のような揺らめきで飛び立っていったのは
形にならない荷物を抱えた人
遠くへと呼びかけた
朝の挨拶をすり抜けて


ここで何かを捨てるとして
私から何が剥がれるだろう
重すぎる体は意外と沈まないもので
脱ぎ捨てなさい、と
誰かが言う


夕暮れ、夕闇、カーテンの落下
ぼんやりと霞む夜は遠くまで透けて
見上げる黒は深い深い密度
手を伸ばせばきっと触れることのできる静寂
その手触りを、伝えたくなる

新しく拾ったものの代わりに
靴を脱ぎ捨てる
背負った鞄から紙飛行機を取り出して、投げる
街灯を越えて、夜の縁を越えて、その先は、見えない
着地するすべて、私のそこは遠くない場所で
伝えたいことがある
そのために、またひとつを脱ぎ捨てる


着地点、その場所へ
脱ぎ捨てなさい、その言葉に頷いて
ゆっくりと、沈み込む


自由詩 着地点 Copyright 霜天 2005-06-07 01:27:20
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