冬の、
竹節一二三

空はややこしく物悲しい
こつこつと誰かの一人帰る音がきこえる
車の高いクラクションがなる
冬の風が耳にしみる

先ほどまでうすいシャツ一枚でいられたのに
わたしはカーディガンをはおり
つめたい指先を口に含む
暖かいこの土地にもようやく
冬の匂いがやってきた

夕焼けの中防波堤にいって
ひざをかかえて目を閉じた
いくらまっても記憶はよみがえらない
冬に死んだあの子の微笑みは思い出せない
冬の思い出はいつもつめたい

乾燥した風の中に下水の匂いがある
水を流さなきゃ 立ち上がると
足の先が冷たくて膝が立たなかった
夕焼けは藍色に染まり始め
よるが間近に迫っている
冬のつめたさは身体に悪い

冬のあの子は笑わない
冬のわたしもわらわない


自由詩 冬の、 Copyright 竹節一二三 2003-12-03 20:03:27
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