白の系図
こしごえ

うちあけることは、むつかしい

しろながすくじらが
えるとき
わたしは
ちいさく「え」と鳴く

しろつめくさが
幸せを茂らせるとき
わたしは
亡霊とかけ落ちする

シロフォンが
はずむ音色を奏でるとき
わたしは
宇宙のすみで星と笑う

白映しろばえが
ほのかに大気を湿らせるとき
わたしは
名の無い華と握手する

無色透明の風に
白骨化したわたしは
桜の下で
春が死におよぶさまをみとどけて
素っ気無くサヨナラをして
どこへ行くともなく
さらす
影も形も無くなった頃
生まれるわたし

幻だった
夏がきて
氷菓子を一口すっと食べた日は
太陽が白い光線を
放っている





          
詩集 「 岸に咲く零雨 」に収録。


自由詩 白の系図 Copyright こしごえ 2005-06-04 06:09:09
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