いななく地上絵
牛坂夏輝
有精卵と無精卵が
いななく
犬の春
春の犬
大きな空の
単純なオペラ
舌の廊下
けれども
憂鬱は
膝の上に先行しない
少しだけ
風が消えて欲しくなる
放浪
濃霧のような
青年の腋下
広大な領地は
内面を信じながら
不良債権のような
脳髄の胴体に
火を点ける
言葉と野獣
いななく
一人用ビニールシート
駆ける白鳥
駆ける錯誤の窓枠
いま倫理観は
内密な悪霊を抱えている
にもかかわらず
横断する白骨
地下室のパンケーキ
腐ってから動く
滅亡した古代文明の
あの地上絵たち
それは
政治的な登山と
芸術的な
水遊びの交尾を
逞しいハイタカの背に
移植し
模範的な
太陽の行動に
捧げる祈りであり
澄んだ唇の中の薔薇だ
宇宙はどう見えるの
美しく
完璧な苔
帰って来た廊下が
少し傾く