ぼくのお城としての書きもの
百(ももと読みます)
空気の振動のなかで寝そべっている。居心地のよさを感じる。両方のあしのうらをぴったりと合わせて仰向けでお眠りすることが多い。背筋が伸びて股関節がよく開いている。
冬が近づいていると聴く。朝日とともに窓を開けると遮光カーテンから覗く光りがウインクしているようだ。天井に映る光りのすじにも動きがあって、時間とともにいろも強さも長さも変わる。
静けさのなかで一緒にいられるひとと出逢えたためしがないけれど、お腹のなかの細菌のことやぶつかり合う原子について、みえなくとも想像することで満たされる想いがある。
ぼくの生活は公的な繋がりと両親のことと遠くに住む詩友、これからできるお仕事仲間たちもきっといて、宴のような気持ちでいられることだろう。
*
街を歩いて、お店にはいる。お付き合いのはじまりの段階なのかな、というふたりをめにして、封を閉じてあるスナックおやつみたいと想った。
お菓子のパッケージを開けてつまめるものだけみれば、ぼくは食欲わかないかも。パッケージの写真もイメージ加工済みであるものね,「こいつ」がそのままつまんで食べられることなかったよ。
仮にもぼくがスナックで、あの子がチョコレートだとしたら、チョコレート菓子を手に取ること、ぼくはしないし、あの子はスナック菓子を食べない。
ふと、先月までお付き合いしていたぼくのはじめての恋人について想う。
*
ひとりひとりのいるセカイに孤独なんてどこにあるのだろう。アパートメントの壁の向こうにひとがいて、鳥もさなぎも亀も仔犬もみんなみんな生きている。
子どもを産んでもそうでなくとも、繋がる命がイブとして存在しているセカイがここだよ、そこに楽園があるんだよ。
倖せだねって煙草をふかすぼくの知らなくなった恋人はきっとどこかで煙草すっている。ぼくは煙りを巻いて、飛びたつ気分で横になる。セミダブルのお布団は、どう考えてもひとり分だ。
ぼくのお城としての書きもの。いつかお城をでて、神殿の柱となれるよう精進してゆきたいこころ。
ゆっくりとゆっくりと目を閉じる。