ブルー・アトラス
みぎめ ひだりめ
宇宙はすべらかに濡れていた
青色の 薄羽のささらぎのような
おぞましくも おおらかな大河の
地の底からふるえてくる鼓動のような
無数の幾何学に彩られているのだから
止まり続ける道理などないのだろう
命はなにかを背負うためにあるが故に
その実存はずっとずっと重たいらしい
わたしが踏みつけた草花が
それでも凛として 死なないように
青葉の つららかな筋脈のあたたかさに
はっと息が漏れるように
なにかを背負うことをやめないのなら
命はどうにもしぶとく光るのだ
引力により世界および倫理は根付いている
足底が地面に縛り付けられているから
わたしはただ祈ることを許されている
あらゆる骨がひとつの軸をつくるから
わたしは生きていることを正当化されている
うごめく鼓動が溢れた熱を巡らせるから
わたしはおぞましくも動いている
冷たい色が指先にじわりと滲むのが
はっきりと見えるのだ
無数の推移が命を湛えながらふるえる故に
青色の宇宙は恐ろしいほどすべらかに濡れている