最大満月
秋葉竹
まだタバコを吸っていたころ
世界中に煙突を建てて
スッパスッパと煙を空へと吐き出していた
夜ともなると
その煙が今夜のような最大満月を隠し
七色の光に潤む
月虹をオレだけにみせてくれた
たまにUFOだとか
謎の光がキラキラ光って
涙の重さを吐く煙に与えるものだから
霧散したあとはサッパリと
雲から這い出たような青い満月だけが
オレだけの夜の街を照らし出すように
こうこうと輝きつづけてくれた
遠くでけたたましいバイクの音がして
満月をみあげるオレのほおに
数滴の小雨が染み込んでいったとき
まるで涙みてぇじゃねぇかって
馬鹿みてぇな感傷がもう一本タバコを
渇望しやがるし
てっぺん超えりゃあ
ガキどものお祭り騒ぎも大盛り上がり
血を裂くようなバイクの悲鳴の音
夜が明けるまで走りつづけるんだろうな
そのとき吐き出すタバコの煙が
なんだか七色にみえたってぇのは
オレのオレだけの時間を棄てた
未練だったりするのかもな
まだタバコを吸っていたころ
世界中に煙突を建てて
スッパスッパと煙を空へと吐き出していた
そんなことを
ふと想い出した今夜の月をみて
今夜の満月は今年最大の満月らしい
てっぺん超えたら雲から顔出して
その神々しい姿を
惜しげもなく曝け出している
すこし煙でも吐いて
その姿をけがしたいとかはもう
もう
これっぽっちも想わないけれど