愛無く暖なく髪はギザギザ    もっぷ
エヴァル-ジュ

冬の日の家のある子に布団なく服なく指の肉崩れ落ち

秋風の楽しさ終わり十一月どれだけ生きてもわからない月

夢ばかり見ていないでとの遺言を残さずに父は他界しました

右左三つ編みでゆく道に見る葉っぱは十一月の秋色

迷う日の今日の迷いは二つ有り二つある故迷いが3つ

それでも夕日が観れた帰り道一人の部屋まで晩秋は凪ぐ

気にしても仕方ないよと夏の日に緑の葉っぱの秋の凛々しさ

幼子が落ち葉踏むため落ち葉踏む真似をして見る大人の靴で

夕雀今日と明日がわかるのか解らぬ私に教えて欲しい

北風と枯れた天狗草のある初冬の風景を待って1年

秋風の優しく日差しが勝る日の衝動  父は空の今どこ?

ただ思うばかりの空を描くようなこれまでの夢これまでの道

抱きしめる結句の位置の私の名あなたのいつものブルーブラック

本当に詠みたい生にっ迷う日を重ねながらの未だエチュード

新しい機種の待ち受け組み立てる夜が楽しい割った氏の電話

携帯を握り未明に一人きり誰かに答えて世界は在ると

誰とでも出会えるわけでないこの世たんぽぽの綿毛はどこから

石ころを何とは無しに蹴ってみるけられるがままの君は星屑

郷の駅二人離れた父母のその愛ゆえの我が世を想う

首都高に落ちる夕日を西の窓の瞬きに覚え季節も覚え

新聞を取りにゆくため靴を履くと必ず明日の春夏秋冬

私から巣立つかのように飛んでゆく異国が母国の風詠む1羽

地平線までは終えるが海は未だ観たことがない  無事でおかえり

真夜中の満月を背負う白鳥の飛来に私の枝は震えて


このみちはうっちゃる場ではないのだが目印のように動けぬ私

捨て案山子お前もここに忘れ去られ朽ちてゆく様その一部始終

訛りつつ私を桜と呼ぶ声のまた一つ上の始発に乗って

思い出の数だけ別れのあるとして
別れの数だけ思い出はなし


渡りから土産をもらう風を呼び広げて見ると潮の香り

春落ち葉細石の上に被さるとふわしゃふわしゃと幼子の靴

季節ごと買って粧うつまり人は翼の対価を円で得ている

カーテンの代わりの異国の布越しに見える何処かに父さんの骨

東京の十一月の初雪が確かなほどに靴紐を結ぶ
希望とか夢とか未来に手を振って冬のあかねに今身投げする

絶望の終着駅の冬の夜の銀河のほとりをさらに素足で

平熱を欲しがる骨と取引し身元不明のコマを進める

靴を履く理由ついに尋ねられよそ者としるこの人の世の

凍み星を結んで描くこの世での最後の歌の結句で微笑う




短歌 愛無く暖なく髪はギザギザ    もっぷ Copyright エヴァル-ジュ 2025-11-04 17:50:37
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