西日の水晶
花野誉
窓の外には
まだ黄緑のイチョウ
西日に照らされて キラキラ光る
その光を受け
陰影をまとい輝く
窓辺に並べられた白い陶器たち
ほとんど目が見えなくても
こんな繊細な作品を生み出せるのだ
どうやったら作れるのかと
じっと眺めていたら
ぽつんと一つ
白い石のようなそれ──
親指大の白い雫
いや、ちがう
藍色のリボンが結ばれた水晶
説明書きには
「丹念に、丹念に
心を込め
時間をかけて磨いた」
とある
思わず触れたくなる
女神の肌のような水晶
きっと触れれば伝わる
彼の指先とその体温が
西日の中に浮かぶ
光る雫には
愛おしさと喜びが
静かに満ちている