神様がやって来た
熊倉ミハイ

ようやく神様がやって来た
この星に
この手に
だから僕はまず
もう出勤をしなくてもいいんだと
本当に安堵した
カーテンを開けると
街のビルのど真ん中に大きな
神様が立っていて
おはようと拝んで
カーテンを閉めるまでに
僕は何回か陽をつぶした
神様は動かない気でいる
どうしてここに降りてきたのか
分からないといった表情の中に
憶測のラクガキは消されつつあり
みんな
腹が減っているのだねと
果物を持ち寄って自撮り
神様の踵の前で踊って
足の爪々はベンチになり
若者二人組が神様の肩に上がる動画は
この上なく炎上した
そういえば
果物を足元に供えるのでなく、その少し開いた口に投げ込むと
そっくりそのままお尻から排泄されるらしい
科学は負けて
その果物を食えば不死になると争った人たちの血で
あの神様の街は立ち入り禁止である
眼をつむると
神様が動いた気がする
インターホンが鳴る
カーテンを開ける
神様はそこにいる
後ろ歩きで玄関に向かう
荒れる息の音と
にじむ汗を確かめるように
神様は僕らを動かない
ようやくやって来たからね
ずっと居たとも


自由詩 神様がやって来た Copyright 熊倉ミハイ 2025-09-18 20:32:04
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