極楽行きの切符
杉原詠二(黒髪)
発菩提心という
極楽行きの切符を買って
地獄行きの特急列車に飛び乗ろう
鬼が嗤う
無間地獄の責め苦なり
死にかけるほどの苦しみが
何十年も続く
お地蔵様が救って下さる
極楽行きの切符を見て
送り出して下さる
極楽への道が見えてきた
あとはレールに乗るだけ
地獄では苦しみも激しいが
眠れないのが一番つらい
不眠症で気が狂う
苦しみに呑まれる
脳が狂い自失する不安
寝たきりで
何も出来なくなるのではと
だが脳は丈夫で大事なために簡単には壊れない
さらに修復される可塑性を持つ
極楽へ行くには人を愛さなければならない
わたしは愛した
極楽はもうすぐ
簡単にはたどり着けない
焼け爛れた回廊を抜けて
信が浅く、ゆえに堕ちた
本当に救われるかどうか
救いを疑えど
死を選ぶことはなかった
鬼どもには好きにいたぶらせておくのが利巧
抵抗するほど喜ばせる
だがわたしはたったひとりあの人のための男なんだよ
最も愛しき人に
合わせる顔を立てるために
不合理でもなんであっても
やらねばならんのだ
反抗には理由があるんだ
愛へ誠実であるために
どんな不条理にも打ち克つんだよ
好きな女の前でくらい
男をみせるんだよ
極楽へ行くと同時に覚る
それがわたしのさとりなのだ
そして愛が永遠に続く
残された人生で
地獄の苦痛の向こうで会いたかった人に会える
したかった学問が出来る
この世もまた花盛り