埋葬
月乃 猫
森は未だ騒乱の蝉しぐれ
鳴き声はやまず
けれども、
風に 壁を這う色付く蔦のあやうい一葉の、はかなく落ちる季節の警鐘
浸食の始まりはきまって、誰もきづかず
無慈悲にも 足をひそめてやってくる
なんなく秋明菊の花弁を開かせ、萩の花の咲きだしや
乱舞する 赤とんぼの翅をとおす夕焼け
そして、匂いたつ秋色の夜の風
または、競い合う虫の輪唱
季節の埋葬は、いにしえからの決まり事にしたがい
横たえる白木の箱の準備をする、亡骸をおさめるため
深く地中に埋めてしまうために
夏が息を吹き返し、その命を戻してしまわないように 深く、深く、 埋めてしまう
亡くなった 猫をそうしたように、そして、来る年の夏がふたたび
生まれる その力となるように