福寿草
杉原詠二(黒髪)

閉じた瞳の中に
黒く輝くオニキス
夢を閉じ込めた
黒い幻

あなたの手は風に踊る光の華
あなたの口は真っ赤に開いた曼殊沙華
あなたの鼻は天に向かうオベリスク
あなたの耳は天使のささやきを聞く福寿草

悲しみを忘れて?
どうせいちどしか生きられないなら
命をかけて

閉じ込められた瞳が輝くとき
世界は目を覚ます
世界中のすべての魂が
あなたの声に耳を澄ましている
あなたの愛に満ちた正義の心が
宇宙の中心で魂をかき混ぜてる
世界の危機が聞こえてくるよ
今はとても危険なとき
天使は空から次々と舞い降りてくる
誘うように甘く危険な香りがする
あなたの髪からは

筋になって消えていく雲よ
わたしの願いをのせて
どこどこまでも
いついつまでも

同じ話は何度も起こらない
手を差し伸べたとき
ラビリンス
愛を探す迷い人同士が
巡り会うなら
孤独が終わる
星が新たに誕生して
宇宙の歴史が大きく書き換わる
まるではかったかのように
ちょうど宇宙を満たす物質の重みすべてが光に変わるほどの
エネルギーが生じて

福寿草の萌える春
スプリング・エフェメラル
すべては想像と努力の産物
宇宙原理は想像と努力を繰り返してきた
生命がそれをできるようになってから
何十億年も過ぎた
永遠を忘れかけていた宇宙も
またそのイマジネーションを
初めの一点からやり直す気になった
セカンド・ビッグバンの
永遠の爆発が
今起ころうとしている
オニキスの眼だけがその未来を見ている
とても優しい爆発
何ひとつ壊さないで広がっていく
愛の光が宇宙を満たす
宇宙は抜け殻を捨てて
脱皮して新しくなる

わたしたちは脱皮して大人にならなければ
愛する人に会うことが出来なかったんだよ


自由詩 福寿草 Copyright 杉原詠二(黒髪) 2025-08-21 19:06:19
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