花開く身体
杉原詠二(黒髪)

固まった首は
常時悲鳴を上げていた
わたしを思って
優しくしなやかな首の骨よ

わたしを労わってくれて
ありがとう
これからも
よろしくね
永き時の絆に
無量の感謝を

神経を電気信号が伝わり
末端から脳までをつなぐ
力を持った
首の骨
ひとつひとつの闇をつないで
銀河のような背骨へと至る
脊椎動物であるわたしに
星々の光が宿されている

心臓の鼓動に包まれて
わたしの宇宙はまた色づいて行く
体の中に心と魂の花が
次々に開いて行く

人々は自然から生まれた
わたしたちもまた自然そのものだ
石から生まれる土
土から生える木
木に宿る虫
虫をはむ鳥
鳥の歌う野辺
それらを
身体とともに守りながら
ともに生きて行けますように

いまも太陽は彼方で燃え
月は光を映している
われわれの身体が祈りを持つ限り
静かな光に包まれた暮らしが
つづきますように

傷の上にも川が流れ
草木が芽吹き
花が咲く
草生した夏よ
すべてが懐かしく
また新しい


自由詩 花開く身体 Copyright 杉原詠二(黒髪) 2025-08-20 21:50:06
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