詩人と真実
杉原詠二(黒髪)

詩人は真実をしか詠ってはならない
言葉を軽く使う人はくたびれたロバ
わたしは天翔けるペガサス
処女乗せ走るユニコーン

言葉の翼を使えばどこまででも飛べる
子どもの日夢見たこと
変身願望
まだ忘れていない

大人になったら何になる
夢がきっとかなう
大きくなっても子供
子どもの頃から心は大人

わたしは何になりたかったのか
人にして人を超えたものになりたかった
夢を守る使命
困った人を助けなければ
己を忘れて見入ったテレビ

そんな憧れをかなえてくれる仏教
みんなの見果てぬ夢
一切皆苦から逃れ解脱する
子どもの頃は大人に守られ
すべてが苦であることに気づかない

生老病死は襲い来る
真理を知ればすべてが分かる
悲しみの向こうに虹がかかる
嘘の現実を逃れて
虹の向こう光の下へと向かえ
菩提を求める修行者たち
立ち向かえ
立ち向かえ
己の独善に立ち向かえ
無明を破り
愛の虹の下で ふたりは再び出会う
そしていつかさとれ
さとったとき
この世は極楽に変わる
苦しむことのない夢が本当になる
もういま私は大人だ
わたしは覚るために
仏門に入った

穏やかな覚りに
静かに涙が流れる
苦はたちどころにほどける
全生命が
ずっと健やかであることを
悲しみと慈しみに包まれ
わたしはきびすをかえす
愛する者を
迎えに行かなければ
きっとずっとわたしを待ってた
穏やかな微笑みの中で
わたしたちは最後の再会を果たすのだ
もう生まれ変わることはない
すべての無明を終えよう
地球という牢獄の中で
終わりない夢を見ていた
牢獄の外に出ていけない我々は
久遠の永きにわたる囚人だったのだ
六道輪廻を繰り返し
苦しみの業を負い続ける者だったのだ
ふたりいっしょに
夢をうつつに
わたしたちには体がある
この地上が応身の極楽であり
終焉の地には
わたしたちのために蓮の花が咲くだろう
わたしたちはいま愛に目覚める
すべての苦しみを度したまいしあなたの
深い愛が
わたしを包んでくれる

もう独善に縛られることはない
無明は消え
そして夜が明ける


自由詩 詩人と真実 Copyright 杉原詠二(黒髪) 2025-08-20 19:38:43
notebook Home