遠くて近い(夏の夜に)
唐草フウ
月が光ったり包むように照らす記憶のない、まだはじまったばかりの夜だった。
顔の何処かで泣かないように空に瞳を任せていた。どこを見上げてみても
わたしが知らないだけで、星はやさしく奏でていたんだった。
でもながれる記憶のなかでは、星が青いから、夏の夜空に溶けてしまっていて、
さがそうとも思えないくらいに色は静かで、
なんという感情の名前かを、誰にも伝えられなかった
*
誰のこともゆるしてしまおう、ゆるしてしまいたい
その過程は 目薬をさすことに似て、
涙点から鼻腔をとおって苦く喉に流れる
しばらくしたら元に戻るから、しばらくはまた忘れてしまう。
自分のしでかした失敗に気づくことも、またそんな時間差で