yankee
プテラノドン

 街は停電していた。僕等は街外れのバッティングセンターへ向かっていた。
夜だというのに「竜巻が渦巻いているせいだ」という友人はヤンキーで
彼が走らせる車は、真っ暗な交差点に渦巻くいくつかのそれをかき消そうと
猛スピードで突っ込んでいく。ご自慢のそのガイコツのキーホルダーがかちゃかちゃと
揺れているよ。「よく知っているね」が口癖の彼は、よく知ってると
褒めようとするけれど、「よく知らないくせに」と言われて傷つくこともあった。
 せまい箱の中で僕等は窮屈だが、よく知らなくても人生の選択肢を並べて遊んでいる。
もしも、あの娘が働く花屋で抱えきれないほどの花束を買って
街中にばら撒くことをしたらきっと―、という道を走っていた。
 だのにどうだ、ふたたび街角に明かりが灯るやいなや
バッティングセンターでゲームをしていたんだ。僕等はそんな感じに画面に映る。
 季節は初夏だ。道端では花が咲いている。小さくて青い花。
その名前をもちろんヤンキーは知らない。
花屋か?バッティングセンターか?何処だっていい場所で
「よく知っているね」彼がそう言うと
ガイコツのキーホルダーもいよいよ笑ってくれるんだ。


自由詩 yankee Copyright プテラノドン 2005-05-31 14:09:32
notebook Home 戻る