花火を見たのか
花野誉


あの日

まだ遊園地があった頃

待ち合わせて出掛ける夕まずめ

武庫川に架かる橋には溢れる人

背の高いその人が

欄干横の塀に私を乗っけてくれた

スカートが風にめくれ

その人がすかさず抑える

見上げて笑った顔

見下ろして笑う私

お互いの一挙手一投足に

気を取られて

花火を見たのか見なかったのか


白薔薇が咲く公園

柵を越すのに抱き上げられる

見上げたその人は暗い顔

見下ろした私は

あの日を思い出せなかった









自由詩 花火を見たのか Copyright 花野誉 2025-07-23 21:26:10
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