たどる
石川和広

落っこちたのに
僕は生きていた
確かめるものはなく
暗い陥没点から深く
上空
光の一点を見つめていた

ねじれない空気
透き通る闇
すすけた壁
恐いのにただぼんやりしている

生きてきた道をたどる
幾百ものストーリーの束がねじれている
ここへ落っこちたのははどういうわけだ
わからない
考える考える
いくつもの悔い
閉じられた時間
広がる瞬間
収縮する思い出の手のひら
美しいときは忘れ去ったわけではない
ねじれている束
ねじれている中

何も間違いない
何もかも間違っていた

ぼくは生きていた
透き通る暗闇に取り囲まれて
ぼんやりと





自由詩 たどる Copyright 石川和広 2005-05-30 17:06:31
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