漂流
霜天
気が付けば、漂流している目覚め
手を伸ばすその先
十センチメートルで
落ちるばかりになっていて
とりあえずここに、漂っている
どうやら
世界の端は滝になっているらしい
落ちてしまえばどこへ行くのだろう
ビルの八階、エレベーターの丸いボタン
開いた先は海だった
どこかで何かを間違えたわけでもなく
一歩を踏み込んで、溺れる
ああ、そうだった、泳げなかった、と
何も知らずに浮かんでいる鞄にしがみつく
今日も毎日を繰り返さないといけないのに
漂流
何も知らない
知る術もない
ただ漂うだけの、こと
気が付けば、漂流している目覚め
知っている顔の人たちが、どこからか集まってきて
お先に、と言って落ちていく
世界の端
逆らうように泳ごうとして、溺れる
ああ、そうだった、そうだったねと
それならばその時まで目を閉じて
漂う