漂流
霜天

気が付けば、漂流している目覚め
手を伸ばすその先
十センチメートルで
落ちるばかりになっていて
とりあえずここに、漂っている


どうやら
世界の端は滝になっているらしい
落ちてしまえばどこへ行くのだろう


ビルの八階、エレベーターの丸いボタン
開いた先は海だった
どこかで何かを間違えたわけでもなく
一歩を踏み込んで、溺れる
ああ、そうだった、泳げなかった、と
何も知らずに浮かんでいる鞄にしがみつく
今日も毎日を繰り返さないといけないのに

漂流
何も知らない
知る術もない
ただ漂うだけの、こと



気が付けば、漂流している目覚め
知っている顔の人たちが、どこからか集まってきて
お先に、と言って落ちていく
世界の端
逆らうように泳ごうとして、溺れる
ああ、そうだった、そうだったねと

それならばその時まで目を閉じて
漂う


自由詩 漂流 Copyright 霜天 2005-05-29 02:35:52
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