東京青年
花野誉


シーズンを過ぎた大農家

私以外に

東京から来た青年一人

私の話す方言が嫌いなので

話しかけないでほしいと言う

ほほぅと思った


ある日の朝

東京青年と軽トラに乗り

山道を二人で行く

運転手は私

峠でギアが滑って

ずんずん坂を下がっていく

カーブが近づく

青ざめて叫び出す青年

それが少し小気味好かった

そろそろいいかと

サイドブレーキを引く

坂道発進

4WDのスイッチを押す

ぐいぐい上りだすトラック

顔色が戻る青年

その日から

話しかけても無視しなくなった

なんだそんなもんか、と気が抜けた













自由詩 東京青年 Copyright 花野誉 2025-05-13 07:50:43
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