ローラ
藤原 実
夜 歪み絵の上に鏡張りの円筒を置くと
立ち現れる 舶来之軽業少女
鏡の森を抜けてきたので
衣装に絡みついた光を手で払う
零度で宙吊りになる 水で書いた詩
ストローで吸い込んで要約すると
遠くの窓で手紙を読む少女に届いた
習い覚えたばかりの
讃美歌とキスを僕の横顔にくれた
六月の森の少女
明日犯す罪により
白紙の塔に幽閉される純粋な花束
春の雪が 無邪気な呪術のように降るなかを
夜行郵便列車がゆっくりと曲がってやって来る
宛名のない手紙を受け取った少女は
封を開いたとたんに消えてしまう
少女の心の闇は
窓辺のカーテンに溜まった光が知るだけだった