そよ風が吹く丘の上にて
室町 礼
白と青の季節の甲斐に栞のようにはさまれた
すきまの日々
冠の下に
七曲がりの川と村落のつらなりを望む
茅葺き屋根の民家ですごす
好きな一対と
放まに裸で寝て
天上の台風をものともせず
娑婆の地獄も意に介しない
目覚めれば腹をすかし白米を炊いて貪り食う
ふたりの
たくあんを喰む音が
山々に響き
飯粒を口の端に残して
女の曲線に勃起すれば女もわらって
わたしのからだを弄ぶ
みえないギターを抱えて
読めない楽譜を奏でる
詩歌なく 音楽なく 絵画もなくとも
ただ、ごはんと交尾と泥のねむりが
山の時間を浸して
暑いだけの夏が来る前のいっとき
ふたりは薄荷の傾く丘の上に
生きている