そよ風が吹く丘の上にて 
室町 礼

白と青の季節の甲斐はざましおりのようにはさまれた
すきまの日々
ちょうじょうの下に
七曲がりの川と村落のつらなりを望む
茅葺き屋根の民家ですごす

好きな一対おんな
ほしいままに裸で寝て
天上の台風せんそうをものともせず
娑婆げかい地獄のたうちも意に介しない

目覚めれば腹をすかし白米を炊いて貪り食う
ふたりの
たくあんを喰む音が
山々に響き
飯粒を口の端に残して
女の曲線からだ勃起よくじょうすれば女もわらって
わたしのからだを弄ぶ

みえないギターを抱えて
読めない楽譜を奏でる
詩歌なく 音楽なく 絵画もなくとも
ただ、ごはんと交尾と泥のねむりが
山の時間を浸して
暑いだけの夏が来る前のいっとき
ふたりは薄荷のいろづく丘の上に
生きている



自由詩 そよ風が吹く丘の上にて  Copyright 室町 礼 2025-03-03 07:15:46
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