いつかの刑事コロンボ
菊西 夕座
「いつか」は、いつかやってくる
だがやってきたのは刑事コロンボだった
「いつか」はどうしたんです、刑事?
警部だけど、頚部損傷だから刑事でいいや
頸部損傷とは?
コウサツされました
絞殺された?
交サツされたんです
サツと交代ですか?
左様です
それでドロンボ警部がやってきたと。
泥棒じゃない、コロンボです
「いつか」はもう来ないんですか?
アタシが来てるから心配ない
でも「交サツ」なんてありますか?
それを調べに来たんです
「絞殺」のまちがいかもしれない。
「いつか」に首はありましたか
それはどういう意味です?
絞殺は首を締めて殺すことです
警部がクビになったのは知ってます
アタシは頸部損傷でクビではない
でも頸部はクビでしょう?
「いつか」に首がなければ絞殺しようがない
首を長くして待ってました。
「いつか」に首ったけでしたか
首なしでは考えられません。
その首をぎゅっと縮めたいと思いましたか
「いつか」がすぐに来るならもちろん。
では実際にその首をぎゅっと縮めましたか
なんどもぎゅっと縮めようとしました。
両手でぎゅっと絞り上げたわけですね
でも一方で来てほしくないとも思いました。
どうしてです
だって「いつか」が叶ったら終わりですから。
その叶うとはどんな目標です
この詩を完全に仕上げることです。
「いつかのコロンボ」ですか
いつかのドロンボです。
それはアタシの管轄外です
「いつかのドロンボ」を仕留めることです。
でもあなたのタイトルはコロンボになってる
刑事さん、ドロンボをつかまえてください。
アタシは殺人課だからドロンボは追わない
同じ警察でしょう?
サツはサツでも別のサツの仕事ですよ
では別のサツを呼んできてください。
「交サツ」したいのですね
そんな警察用語は知りません。
警察擁護なんてアタシもしませんよ
あなたはそれでも警部ですか?
どうもさっきから頸部かもしれない
いつから頸部なんです?
(コロンと首が落ちそうになる)
ぼうっとしないで下さい、コロンボ警部
これは失礼、没頭してました
いつからぼうっとしてたんです?
「いつか」らか
冒頭からじゃないですか。
没頭してたら「いつか」を見失いまして
やってきたのは刑事コロンボでした
それで、なんの話でしたっけ
刑事さん、タイトルをドロンボにかえてください。
それはあなたの仕事です
いつか変えようとは思っているのですが。
それではあなたを完全犯罪の罪で逮捕しなければならない
いつか牢から解放されるでしょうか?
「いつか」の足跡を正しい操作で潰していければね
「いつか」を韻つかって踏みつぶしていくのですね?
右様です
右様とは?
左様の逆です
ちがうということですね?
ちがいます
でもあなたは「いつか」なんてないといつか言った。
そうさね、アタシには捜査しかないもんで
解放されたらすぐに代わってくれますか?
首を洗って待ってますよ
ありがとう「いつかの刑事コロンボ」。
さようなら、詩と交サツの作家さん
――こうして作家はいつも「いつか」の身代わりを得た