信号
由比良 倖


ディスプレイに埃が積もってる。

水際で(ねえ)生きている自信が無かった。
私は字ばかり食べて生きてきたから。
ラズベリーが、美味しいのかも、知らない。
でも唇にラズベリーを塗りつけて、歩きたい。
誰かに、告白しに、出掛けにいきたい。
「あの場所」へ。「あの場所」へ。「あの場所」へ。

ノートの上で感情が揺れている。
インクに血を混ぜている。
指先から、私は果てて行く。

  ああこの感じ、松の葉のような、
  何処にでも、何処にだって、行ける感じ


少ない水の量で息が出来たから、
もう私には何も要らない。
地球を感じることが、私の趣味。
(見上げると、空は、木の手に抱かれてる)

私に残るのは胸の奥、ただ、木漏れ日の匂いだけ。


……ねえ、この冷たい粒のような世界から出してください……


自由詩 信号 Copyright 由比良 倖 2025-01-30 07:30:34
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