信号
由比良 倖
1
ディスプレイに埃が積もってる。
水際で(ねえ)生きている自信が無かった。
私は字ばかり食べて生きてきたから。
ラズベリーが、美味しいのかも、知らない。
でも唇にラズベリーを塗りつけて、歩きたい。
誰かに、告白しに、出掛けにいきたい。
「あの場所」へ。「あの場所」へ。「あの場所」へ。
ノートの上で感情が揺れている。
インクに血を混ぜている。
指先から、私は果てて行く。
ああこの感じ、松の葉のような、
何処にでも、何処にだって、行ける感じ
2
少ない水の量で息が出来たから、
もう私には何も要らない。
地球を感じることが、私の趣味。
(見上げると、空は、木の手に抱かれてる)
私に残るのは胸の奥、ただ、木漏れ日の匂いだけ。
3
……ねえ、この冷たい粒のような世界から出してください……