ユートピア万歳!
鏡文志

誰一人、針を止める者はいなかった
時間だけが、過ぎていった

誰一人、悪いことをする者はいなかった 
誰一人、互いを憎む者もいなかった
誰一人、疑問に思う者はなかった
時間だけが、過ぎていった

何一つ、憎む必要がなかった
何一つ、愛す必要もなかった
何一つ、取り繕う必要もなかった
彼らは、全てが完璧だったから

一台、一台とショートしていった
二台、三台とショートしていった
皆、涙を流し、悲観する様子を見せた
でも、一体何が悲しいのか?そのことを確認する者は、いなかった

涙を逃せば、それで良かった 悲観する様子を見せれば、それで良かった
だから、そのことを確認する必要も、何もなかった

そして、最後の一台が最後から二代目の機械がショートしようとする時、最後の一台はいつものように涙を流し
「ユートピア万歳!」と呻き声を上げた
それが人間が機械に託した、唯一のメッセージだった

最後の一台がショートしたことを知る者は誰もいない
証人もいなく、確認も、記録も、報告さえ、なかった

時間だけは、誰も止められなかった 空間だけは、誰も埋められなかった
只、全てが過ぎ去っていった
私達がもう、それを確認できない以上 そのことを悲観する必要も、何もなかった


自由詩 ユートピア万歳! Copyright 鏡文志 2025-01-19 16:46:06
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