人 魚
大覚アキラ

聞いたことのない名前の島の
生温かい浅瀬で戯れる半裸の娘たち
その下半身は鱗に覆われていて
しなやかな魚の尾鰭を思わせる
夕日を反射して虹色に輝いている
それを 洗いたての柔らかなタオルで包んで
濡れた鱗を優しく乾かしてあげよう
爪先からゆっくりと包丁の背で
傷つけないように 丁寧に鱗を取って
なめらかな胸の膨らみの下に
そっと包丁を差し込んだら
躊躇せず一気に切り落として
腹から肛門まで一文字に切り裂き
艶かしいルビー色の内臓を取り出して
きれいに水で洗い流して乾かしたら
腹を手前にし 頭のほうから
中骨の上に包丁を差し入れ
骨に沿って包丁でゆっくりと切り
裏返しにして中骨を下にして
再び 中骨の上に包丁を沿わせ
尾まで慎重に切り進めてゆく
包丁を寝かせて 腹骨を漉き取ったら
頭のほうから 皮を手で剥ぎ取って
三枚おろしのできあがりです


自由詩 人 魚 Copyright 大覚アキラ 2005-05-25 13:15:32
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