人災は閉じられない「すずめの戸締まり」
栗栖真理亜

2024年4月5日に日本テレビ金曜ロードショーで新海誠監督作品の「すずめの戸締まり」が放送されることを知り、その日は1日の仕事終わりに座布団の上にのんびり座りながら観た。
ちなみに新海誠監督作品は初めてで、「君の名は」などは観たことがなかったので、どんな作品なのか楽しみにしていた。
いざ、テレビの前に座って観てみると、この作品は岩戸鈴芽という東日本大震災の被災者で孤児である少女が宗像 草太という青年と出会い、宮崎、愛媛、神戸、東京と一緒に旅をしながら、各地で大震災を巻き起こす〝みみず〟を鎮めるストーリーである。
古来言い伝えられてきた地震とみみずとの関係性、現在の神道とは違う自然宗教的な世界観など、ファンタジーを織り交ぜながら、被災者やそれを受け入れた親族の葛藤や厳しさ、それを乗り越えていこうとする人間のたくましさと成長、それを見守る周りの優しさがよく描かれていた。
しかし、この作品には人災である原発事故については描かれていないのが非常に残念である。
あくまで自然災害についてのみ描かれていて、そこにいる人間たちは皆、良心的に描かれていた。
人間の犯す愚かさやエゴイズム、原発事故によって故郷を離れざる終えなくなった被災者の苦悩または放射能汚染に苦しむ人々なども描ききれていたなら、もっと深い作品になっていたのではないか。
そんなことを思いながら、眠い目をこすりながら寝床に入った。


散文(批評随筆小説等) 人災は閉じられない「すずめの戸締まり」 Copyright 栗栖真理亜 2024-11-24 22:19:08
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