泥と灰の聖遺物
ただのみきや
チャコールグレーの小さな蛾
狂ったように暴れてた
冷たいアスファルト背に
おしみなくしぶとく力なく
さかしまの日差しに浮かれ
うなされて
生死の境を針と糸
縫うように縫うように
浮いては沈みまた浮いて
蛾の気持ち
人の気持ち
みんなだれかの影法師
小さな天蓋プラネタリウム
きみらの悟りの産物だ
いいよそれでどうとでも
わたしもきみらと同じさ
世界
自分
世という界で
自らを分ける
わたしが所有する
自分という万能おもちゃ
自傷のための十徳ナイフ
だれの期待にも応えない
ここに埋もれたままの
「好き」と「謎」を発掘する
生の残りを蛾のように
おしみなくしぶとく力なく
天地無用の天地真理
浮かれうなされテニスコート
イカれ生かされあなたを待つの
────神よ
雹で打たれて蝶は死に
秒に撃たれて俺も死ぬ
鋲で刺し留め蝶を活け
法が差し止め俺は逃げ
興が乗らずに蝶も去り
業を煮やした君爆ぜる
(2024年11月10日)