心の濃度
由比良 倖

長らえてふと懐かしい部屋の壁


月曜日、仏壇に蝿が来ている


ひとつだけ秋空に乞う生きる意味


鬱の字で冷えたカルテを陽が包む


詩や歌と同じ濃度の息を吸う


カーディガン一枚羽織るだけの朝


忘れないこの街の恋のこの速度


前髪がこの世の風に揺れている


冬の匂いまたどこまでもひんやりと


俳句 心の濃度 Copyright 由比良 倖 2024-11-03 11:52:58
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