白菊
リリー

 小さく硬ばった花片を
 朝風に震わせる白菊が霜に打たれて
 紫色にうち伏した
 
 昨夜
 把えられないあなたの
 おぼろな姿が身近く訪れた
 手を差し伸べて
 髪を撫でようとすると
 ふと遠のく
 愛していますと告げようとすると
 その目が固くなり
 唯だまって腕にすがって歩く

 心が穏やかになって
 童女のように虚しくなり切ると
 微笑みは今までの何十倍も優しく
 美しくなって
 そっとより添って来てくれる

 目を瞑って歩いても
 こわいものは何もない
 瞼の裏、夜の間に霜のおりた広野がみえて
 その中におちこんでいく!
 安らぎを打ち消して咽び泣いたのだった

 ゆるやかに陽のさし始めた叢、
 露に濡れる蜘蛛の念珠が白菊の葉陰で
 光っている
 


自由詩 白菊 Copyright リリー 2024-10-24 19:09:22
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