あのひのくもり
陽向(2躯-30~35)

十年前、なお思いだすと、古い教室の、とびらのむこう、鳥のなき声がかなしげにちくちくと鳴いている。
手でつかまえたすずめ、元気よく教室の窓のそとへ、飛びゆく。
なお、
わたしがかなしげな目で、先生に叱られている、そのよろこばしく、ただよう怒りの、あんたいの若さは、まだ大人のそう音すら聴こえない。
そしてまた、縄跳びをうまく飛ぶことができない、わたしを、みなからかう。
その日は雨で、みずたまりが、あたたかな匂いをはっして居た。
そのぼんやりした、くうかんを見ると、こども乍らに、煩悩がふつふつと湧いた。

しょくじ、べんい、こうじょうしん。
いかり、げんき、よろこび、かんしゃ。こうげき、ぼうぎょ、れっとうかん。
わたしは、
その古い教室なんともいえないくるしみのけはいを感じとるのだそのけはいはまるでみらい永劫のくるしみあしたもあさってもそのくるしみにむかう

はい、
わたしは、きょうしつのみんなのまえで、小話をした、ぜんぶ嘘だった。
ほんと君はおもしろいね、みんなすごくよろこんでて、みんな君の話は良かったとうわさに成ってたよ。

いまそのくうかんは、攻撃のままばかり、あらわれ、
ああ、みんなしんでくれたら、しばらくすると、みんなしんだ。

虚像があらわれる、現れる、表れる、いつまでも、何時までも。


自由詩 あのひのくもり Copyright 陽向(2躯-30~35) 2024-10-22 21:12:56
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