無音
這 いずる

寄せては返す波が
実をひとつちぎって落として
落として攫ってしまった

私の手から離れていった


私と
私と話してくれませんか
孤独の
孤独の話をしましょう
私たちが遊んだ遊星の空想と混じった
現実なんてほとんどない
創り上げられた理想の
楽園が
瞬いて瞬いて煌めいて燃えて
燃え尽きていくのでしょう
灰は飾る
レースのベールを

私たち
私たちの話を
しましょう
私たち
いく場所も解らずに
彷徨っているだけの
道行が
雪が重なっていくでしょう
ちらちら
ちらちら
あの峠を抜けたら
どこにも 何処かへ 見通しが
山に山が山に山に
深く深く森の陰が
雪が深まる重なる深く

私と君の話を
私と
君、君の話を
してほしい
君の話をしていたい
していたいのに
私が
私が私に私の私、私がこわくて
怖くて怖くてなにも
何もない何もないのに
何も無いよ
明日も明後日も今日も一秒の後も
続いているのが怖くて
何も無いのが
だから君の話を
音楽の君の話をして
君に向き合える
音楽をして
音が音だけ聞こえて
音が聞こえて
こわくて



自由詩 無音 Copyright 這 いずる 2024-10-21 22:25:53
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