一筆書きのたましいは
ただのみきや
雲が雨へ
悲しみが涙へとほどけるように
もつれむすぼれた紐状の時感覚
遠近法と陰影を施されただけの
一枚の絵の中の記憶の構図と感情の色彩
それらすべてが
ことばへほどけるなら
数多の矛盾は美しく火花を散らし
殻をもたない宇宙卵
こんな微睡む混沌も
晴れやかに消滅することだろう
なにごとも
はじめから
なかったかのよう
誰にとっても他人の夢
ことばはことばのままなにも語らず
石みたいにほほ笑み(あるいは涙し)
立ち眩む者だけの銅鏡として
(2024年10月20日)