ただのみきや

濡れそぼつすずめらが
低い枝から隣家の庭先へ消えた時
わたしは「あわれ」を見なかった
ただチュンにチュンを重ね
チュンの間と強弱で言い尽くす 
すずめらの韻律は人より力強く
雨音と斬り結びその滴は頬をかすめた


休日の窓の向こう
ゆるゆると蜻蛉はおよぐ
力をなくした樹々の葉に
今日はまだ 風はやさしく
ひと籠の果物のように熟れすぎた
静寂は かすかに死を匂わせ
降りつもる砂金に埋もれてゆく


色鉛筆すら持てなくなった
母の目を借りて見上げる
空は深々とし
香の煙に似た雲は鼻孔にこみ上げ
痛みをほのめかし 青をやわらげる
山は色味を変え始め 人もまた
瞳に寄せて来る つめたい波は鐘の音に似て



               (2024年10月14日)








自由詩Copyright ただのみきや 2024-10-14 12:59:45
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