クラーク博士
本田憲嵩
「少年よ大志を抱け」、
伸びやかに大志をまっすぐに指ししめす、
羊ケ丘の博士の指先に、
少年としての視線が搭乗する、
そこに飛来してくる、
小さな飛行機の模型のようなトンボ、
なん台も博士の指先からまっすぐに飛び立ってゆく、
そんなパイロットの少年の見ている世界は、
どこまでも澄みきっている、
秋晴れの夢の空、
「少年よ大志を抱け」、
――けれども地上ではひとりの男が、
日々の生活の糧を得るために、
フォークリフトのコックピットのなかで、
四角く固められた牧草の、
とても狭いコンテナからの運搬と、
パレットへの配付けのため、
ベールクランプの操縦にとても四苦八苦していて、
その澄んだ秋空を眺めている余裕すらも、
今のところないが、
(少年よ大志を抱け)、