大人だってツライんだよ
涙(ルイ)
大人だってツライんだよ
世界中から切り離されたみたいに
どこにも誰とも繋がれない ひとりぼっちの夜
化膿したまま塞がらない傷口に指をツッコんで
さらにグジュグジュ
血を噴き出させては痛がって
ひどく頭が痛くて 起きてるさえしんどくて
心がギュっと 何かに押しつぶされたみたい
壊れそうで でも壊れきれなくて
呼吸するのもままならない
どこかに摑まるところはないものかと
友人にLINEしてみれば
この前お金貸してって云われたの 断ったせいか
完全無視 既読ついたまま連絡は来なかった
どうしよう どうしよう どうしよう
あとからあとから溢れ出てくる過去の記憶
怒りがわたしを支配しようとしている
燃え上がる炎で わたしを焼き尽くそうとしている
時計の針は午前零時を指している
あなたのツライお気持ち お聞かせください
いのちの電話
只今たいへん混み合っております
後ほどもう一度おかけ直しください
ツーツーツー ツーツーツー
30回目のコール
只今たいへん……
わたしの思いは空中で飛散
誰にもどこにも届かない
こんなふうにひとり 苦しくてツラくてやりきれない夜を
送っていることなど あの人は考えもしないのだろう
むしろ 喜んでいるのかもしれない
いい気味だと笑っているのかもしれない
ただいいなりにするだけでは飽き足らず
思考回路まで支配し操ろうとするつもりなの
一体いつまであの人の操り人形でいなけりゃならない?
こんなことがずっと
死ぬまで続くというの
そんなの もううんざりだよ
疲れちゃったよ
いい加減 わたしを解放して
いや わたしがわたしを解放する方法を
誰でもいいから どうかわたしに教えてよ
ひとりぼっちの夜
どうにもこうにも ひとりでは抱えきれなくて
だから こんな夜には誰かに背中そっとなでなでされて
ただただ声を放って泣きたいの
大人だってツライんだよ
カーテンを開け 窓の外
せめて月でも出ていないかと
夜空を見上げてみれば
漆黒の闇だけが ものも云わず
ただただ静かにずっと
そこに佇んでいるだけだった